彼の素顔は甘くて危険すぎる

初めて聞く言葉に首を傾げていると、スマホで検索して見せてくれた。
何年か前に親の仕事関係で一緒に行った場所らしい。

フランスの南西部にある海沿いの小さな街で、白い砂浜と真っ青なビーチがフランスで最も人気の別荘地らしい。
しかも、その海沿いに綺麗な砂丘があって、そこから眺める海が凄く綺麗だと。

「うちの両親、ハリウッド俳優専門のエージェント会社を経営してるから、その契約してる俳優さんの別荘に行った時に見た景色なんだけど」
「………え」

知らなかった。
彼のご両親がそんな凄い人だとは。
確かに、このマンションの豪華さは庶民ではないことは分かるけど。
さすがに『ハリウッド俳優』と関係あるとは思いもしなかった。

「それで、ロサンゼルスなんだね」
「……ん」

謎が一つ解けたけど、ますます彼との距離を感じてしまう。
こんな風に普通に話しててもいい人なのかな?

「何、その眼」
「え?……あ、いや。なんか、遠い世界の人だなぁと思って」
「俺、普通だよ?別にハリウッドスターでもないし」
「でも、『SëI』じゃない」
「ひまりはその『SëI』の彼女じゃん」
「彼女………でいいのかな」

不安になる。
芸能関係に疎い私でも、さすがに住む世界が違うって。

「俺がいいって言ってんだから関係ないだろ」
「………」

学校での不破くんと家での彼からはスターのオーラを感じない。
だけど、クリスマス・イヴの時みたいな彼を目の当りにしたら、嫌でも肌で感じる。
気安く声をかけるのも憚れる人なんだと。

「俺は俺だし、ひまりはひまりだろ」
「………ん」

考えることが多すぎて、頭の中が許容オーバーだよ。

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