彼の素顔は甘くて危険すぎる
球技大会3日前。
担任が英語教諭ということもあり、英語の授業が球技大会の練習に振り替えられた。
今年はかなりの力の入れ様。
今年のクラス編成が、結構運動神経のいいメンバーが揃っていることもあり、担任はやる気満々。
バレーとバスケは優勝を狙うらしく、ソフトボールとテニスと卓球は経験者が優遇され、残るサッカーとドッジボールは、バレーとバスケのスタメンメンバーが残りのクラスメイトを引っ張るという作戦らしい。
運動神経のないひまりは当然ドッジボールに配置され、常に無言の不破もひまりと同じドッジボールのチームに。
10月半ばとは言え、日差しは結構強くて、日中の気温は20度超え。
普段から運動をしないひまりにとって、体育の授業だけでも疲れるのに英語の授業も振替になって体力的に疲労感が募る。
4限の英語の授業が球技大会の練習に振り替えられたため、お昼休みは食欲よりも休息を優先する生徒も少なくない。
ひまりは体育教官室に体育用具室の鍵を返却し教室へと戻る途中、廊下でふらつく男子生徒を発見。
「不破くん、……大丈夫?」
「………」
「えっ、……保健室行く?」
「………」
「肩つかまって?」
初めて顔を横に振った不破。
いつもは小さく縦に振るのが挨拶代わりなのに、今日初めて『ううん』と分かるように顔を横に振ったのだ。
誰もが自分のことで手一杯のようで、不破の体調を気遣う者はいない。
ひまりは肩を貸し、不破を支えるように保健室へと向かった。