彼の素顔は甘くて危険すぎる
(不破視点)
3月13日金曜日の放課後。
自宅へ帰宅した俺は、キッチンに立つひまりをじっと見据える。
何度尋ねても欲しいものは無いと言う。
一般的な女子高生が欲しがるようなものを彼女はあまり欲しがらない。
それこそ、画材道具やら美術関連の雑誌の新刊とかなら反応を示しそうだが、もっと特別なものをプレゼントしたい。
だいぶ前から考えて、既にプレゼントは用意してあるけれど……。
「ひまり」
「……ん?」
「明日、何時に来んの?」
「………」
野菜を洗う手が止まった。
何か用事でもあるんだろうか?
「ちょっと用事があって、何時になるか分からないんだけど」
「浮気?」
「え、違うよっ!」
「誰と会うの?」
「別に誰とも会わないよ」
「嘘吐いてる」
「………」
ホワイトデーで、しかも土曜日。
わざわざ仕事入れずに空けておいたのに、デートも出来ないとかマジあり得ない。
「誰かに会うとかではないんだけど、ちょっと待ち遠しい荷物があって」
「………荷物?」
「……うん」
美術関連の選考結果か何かだろうか?
美術展と言っても大きいものから小さいものまで沢山あって。
ひまりは結構色んなものに出してるっぽい。
だから、美術関連の通知だとか選考結果ならば、デートを後回しでも、まぁ我慢は出来るかな。
「14日必着だったはずだから、夕方頃には来れると思うけど」
「うん、分かった」
彼女を困らせたくはない。
いつだって笑顔でいて欲しいから。
「無理そうなら連絡して?俺が会いに行くから」
「うん、ありがと」