彼の素顔は甘くて危険すぎる
夕食を食べ終え、リビングで寛いでいる彼女を見つめて。
「進路決まってんの?」
「進路?……うん、美大に行くつもりだけど?受かればの話で」
「美大かぁ」
「不破くんは音大?頭がいいからどこにでも行けるでしょ。……あ、もしかして、アメリカに戻るとか?」
音大に行くつもりはない。
これといってやりたいことは、音楽以外に無いけど。
今はもっと沢山の楽器に出会いたいかな。
「音大には行くつもりは無いよ。それに、アメリカには暫く戻るつもりはないけど、先のことは分からない」
「そうなんだね」
「色んな楽器に触れてみたいし、もっとコクのある曲を作りたいっての以外は今は何も望んでないかな」
「才能ある人の考えだね」
「そうか?ひまりだって似たようなもんじゃね?」
「私なんてまだまだ全然」
もうすぐ3年に進級する。
以前にも進路希望調査票を提出してるが、未だに進路が決まってない。
彼女のように進む道が見えてるなら前に進めるんだけど。
「大学に行って、合コンして、男にチヤホヤされて」
「……ん?」
「浮気したら監禁するよ?」
「へっ……?」
最近よく思う。
もっと大人びて綺麗になったら、色んな男から声を掛けられるようになるんだろうなって。
俺がいない所で何が起きるか分からないし。
それこそ、飲み会でお酒飲んで勢いで押し倒されでもしたら……。
俺でさえ、必死に我慢してるってのに。
知らねぇ男に搔っ攫われるのだけはご免だ。
「えっ、ちょっ……んッ……っ」
両想いになっても不安は尽きない。
むしろ、片思いだった時の方が気が楽だった気がする。
無防備すぎる彼女の後頭部を支え、唇を奪う。
誰にも触れさせたくないと思ってしまうほど、独占欲に駆られて。