彼の素顔は甘くて危険すぎる

「今日発売日だったでしょ?」
「……ん」
「抽選日?当選日っていうの?その日だったから、宅配業者が来るのを楽しみにしてたんだけど、全部外れてたから」
「俺に言えばいいのに」
「みんな必死に応募してるのに、ズルは出来ないよ」

ホント、こういう気真面目過ぎるところがめっちゃ好き。
自分だけ特別だと鼻にかけない所。

俺の正体を知っても尚、変わらず接してくれるし。
俺の彼女になっても尚、一般の人と同じように接してくれる。

俺的にはおねだりされても全然構わないけど、それをしないからこそ彼女に惹かれて惚れてるんだと思う。

俺のサインが入ったCDをまじまじ見つめて涙ぐんでるし。

「あ、もしかして……さっき泣いてたのって、コレのせい?」
「……うん。エレベーターの中で『SëI』の曲が流れててついつい感傷に浸ってしまって……」
「バカだな……」

彼女をぎゅっと抱き締める。
だって、可愛すぎんだろっ。

「俺のファンなの?」
「当たり前でしょ」
「俺の正体知ってんの、かなり貴重だよ?」
「分かってるよ」
「しかも、彼女だよ?」
「……うんっ」

正体を知ってる人は何人かいる。
事務所の一部だけど、ひまり以外に数人。
だけど、『彼女』という存在は唯一無二で。
ひまりはその特別な存在なのに。

「ぎゅーも出来るし、ちゅーも出来るよ?」
「言わなくていいからっ」
「それに、こういうことも出来るじゃん?」
「んっ……」

彼女の後頭部を支えながら、ソファーに押し倒した。
可愛すぎて、理性がぶっ飛びそう。
だって、耳まで真っ赤なんだもん。

ぎゅっと目を瞑る彼女の額に優しくキスを落とし、涙で濡れた睫毛にも。
そして頬に、鼻に。
最後は小さな唇に触れるだけのキスを。

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