彼の素顔は甘くて危険すぎる
付き合い始めの時に言っておくんだったと、正直後悔していた。
簡単に別れるくらいなら、恋人なんて面倒すぎる関係性は築かないって。
人付き合いが苦手な俺が、事務所と契約までしてメジャーデビューしたからには、活動自体を邪魔されたくない。
誰かに脅されたくらいで、活動が制限されるくらいなら、最初から日本に来てない。
そもそも、顔を出さないのにはそれなりの理由があって。
こういう煩わしいことを避ける為に非公開にしてるんだから、第三者にとやかく言われる筋合いはない。
「今度、『別れる』って言ったら、マジで監禁するよ?」
「っ……」
「俺に、……逢わずにはいられないようにしてやる」
「んッ……っ……」
俺の言葉に驚いた表情を覗かせる彼女にキスをする。
俺のことしか考えられないように……。
俺ばかりがこんなにも好きすぎるのが腹立って。
『別れる』とか簡単に口に出来ないようにしてやる。
手首を押さえつけてる手を指先にスライドさせて指を絡ませる。
少し無理やり奪う感じのキスを次第に弱めて、緩急つけて攻め立てる。
上唇を甘嚙みしてほんの少し余韻を残したら、リップ音を響かせ吸い上げ。
逃げる舌先を執拗に追い求めて絡み取り、尚も求めるように角度を変え唇を啄む。
僅かな隙間から息を吸おうとするのも制御できないほどに……。
ゆっくりと唇を離すと、恐る恐る瞼を開けるひまり。
頬を赤く染め、俺の気持ちでも推し図ろうとしているのが見て取れる。
「奴とも、……キスした?」
ブンブンッと顔を横に振る彼女。
分かってる。
頑張って抵抗してたことも。
だけど、こんな風に不安にさせること自体が罪だって分かって欲しくて。