彼の素顔は甘くて危険すぎる
ひまりに話したけれど、さら~りと交わされてしまった。
まぁ、予想はしてたけど。
けど、俺も簡単には折れるつもりはないんだよね~。
社長と話をつけて、バイト料を前倒しで支払って貰うことにしてある。
少しでも、承諾して貰うための安心材料を揃えるために。
それに……。
8月2日はひまりの誕生日。
俺がアメリカにいる間に誕生日を迎えてしまう。
付き合い始めて、初めての誕生日だから、直接『おめでとう』が言いたいし、プレゼントも渡したい。
ひまりがアメリカに来れないなら、日本に一時帰国しなきゃならないし。
どうしたものかと悩みあぐねる。
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結局、翌日の終業式を迎えても、ひまりから『行く』とは返事が貰えなかった。
挙句の果てには……。
『病院の休みを前倒しで8月1日から5連休で取るから、それで旅行することになってる』だって。
おいおい、ひまり。
それって、彼氏のことは眼中にねぇのかよ。
ひまりのことだから、電話とメールで話せるからいいいよね?的な考えだと思う。
いつになっても俺の方が好きすぎて。
想いの深さが全然違う。
納得いかねぇ。
終業式だから半日で学校が終わってしまい、今二人で校門を出た所。
モデルやタレントの子たちを迎えに来たスタッフたちが何人かいて、その横を素早く横切る。
「不破くん、何食べる?」
「……ひまり」
「また、そういうこと言う~」
マジで食べたい。
ちゅーもぎゅーもお預けになるかと思うと、どうにかなりそう。
すっかり隣を歩くことにも慣れた彼女は、俺の顔を見ながら話し掛ける。
こういうなんてことない日常が幸せなんだと痛感した。