彼の素顔は甘くて危険すぎる

(ひまり視点)

不破くんから『一緒に来る?』と誘われた晩。
彼の家から帰宅した私は、早速両親に相談してみた。

「ひまりは行きたいの?」
「パスポート持ってないだろ」
「……うん」
「英語も話せないでしょ?」
「それでも行きたいのか?」
「……うん」

ダメもとで交渉中。

英語はどうにもならないけど、アプリを駆使したら何とかなると思う。
お金は貯めてる貯金とバイト代でどうにかなりそうだし。
パスポートは最速で1週間くらいだと、さっき調べたらネットに載ってた。

問題は、両親が許可を出すかどうか。
この最難関さえクリア出来たら、1週間くらいの旅行なら許可が出そうな気がする。

不破くんが言ってた、『夏休みの間』というのは無理でも。
旅行感覚なら、許して貰えそうな気がしなくもない。

「パスポートが取れたらいい?」
「……そうねぇ」
「宿泊先がどこなのか、ちゃんと連絡が取れるのか、往復の便がいつどこの便なのか、これくらいは最低条件かな」
「パパ、いいの?!」
「ダメだと言っても行きたいって言うんだろ?」
「うん!!」
「パパの条件にもう一つプラスで」
「………何?」
「向こうに着いたら、彼氏くんのご両親と電話で話させて貰う、これがママの条件」
「うん!!それなら、大丈夫だと思う!!」
「ひまりもそういう歳になったんだなぁ」
「ねぇ、ホントに早いものね~」

兄が高校時代に年上の彼女と旅行に行った過去があって、意外とうちの両親はその手の話は融通が利く方。
それでも、男の子と違って私は女の子だから、許可が出ないかもと思ってた。

普段の不破くんが誠実だから、それが決定打のようだ。

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