彼の素顔は甘くて危険すぎる
8月2日、午前10時、羽田空港の第3ターミナル。
両親に見守られ、搭乗手続きをする。
飛行機自体は初めてじゃないけど、海外は初めてなこともあって、父親が事細かく手順をメモしてくれた。
それと、入国時に必要な簡単な英会話も。
11時55分羽田発、ロサンゼルス行きの便。
現地到着時間は2日の6時過ぎ。
空港内で軽く時間を潰してから、父親が手配してくれた送迎の車でホテルに行く予定。
不破くんは自宅にと言うかもしれないけど、何も言わずに行くからには、念の為にホテルは確保しておかないと。
万が一、彼に会えないかもしれないしね。
何事も経験。
昔の私ならたぶん危険は避けて生きていたけど。
彼に出会ってだいぶ変わった。
もっと色々な事を吸収したいし、知らない場所にも行きたいと思えるように。
彼が前に言った、『アルカション』も実物を見てみたいし、エジプトのピラミッドも見てみたい。
大人になるって、こういう事なんだろうなぁと最近思うようになった。
それでも、まだまだ半人前の私は、誰かに支えて貰わないと一人では到底動けない。
早く大人になりたいわけじゃないし、まだ子供でいたい気持ちもある。
この旅行が、私にとって素敵なものになったらいいな。
ドルに両替するのも一人じゃ怖くて。
父親が空港でしてくれた。
足りなくなったら向こうですればいいと言う。
もちろん、彼に手伝って貰って。
「パパ、ママ、行ってきます」
「ひまり、向こうに着いたら連絡頂戴ね?」
「うん、分かってるって」
「楽しんで来なさい」
「ありがと、パパ」