彼の素顔は甘くて危険すぎる
話を聞くと、少しややこしくて。
今現在はアメリカ国籍で日本に留学の為に来日している扱いでビザが発給されているという。
それを延長したとして、大学に進学すると、卒業前に永住権を選択する分岐点が訪れるという。
今はまだ考えられず、とりあえずは今のままで生活する予定らしいが、今後はその点に於いても考えねばならないらしい。
いずれはアメリカに戻るのか。
それとも、日本を拠点として活動するのか。
それらも踏まえて、進路である大学を選ぶ必要があるという。
私には難し過ぎてよく分からない。
やりたい事とすべき事が違うと言っていた。
「もし、もしもだよ?」
「……ん」
「アメリカに帰るという決断をするなら」
「………ん」
「その時は、予めに話してくれる?」
「……ん」
「出来るだけ早くに話して貰えたら、私も出来るだけの努力はするつもりだから」
「……それって、どういう意味?」
「どういうって、転学?転校?引っ越し?よく分からないけど、私もアメリカに行くつもり♪」
「えええええええッ?!」
「そんなに驚くこと?」
「そりゃあ、驚くでしょ!!」
「そう?」
「ん!!」
「だって、絵は世界中、どこにいたって描けるよ?」
「………そうかもしれないけど」
「フランスに行くか悩むくらいなら、不破くんがいる所がいい」
「っ……」
「ウフフッんっ……ッ……」
照れながら視線を逸らすと、ぎゅっと抱き締められた。
私の言葉が嬉しかったらしい。
最近、自分の気持ちをちゃんと伝えようと努力している。
アーロンに教わったことだ。
嫉妬してくれるうちが華だと。
だから、自分を大切にしてくれる人がいるなら、出来る時にちゃんと伝えるべきだと。