彼の素顔は甘くて危険すぎる

「ダブルメジャーってのは、専攻を一つに絞らずに、一度に専攻を二つ修得するってことで。通常一つを取り終わってから二つ目を専攻するのと違い、同時だから習得するまでの時間が短縮されるってわけ」
「一つでも習得するの大変なのに、一度に二つも?欲張って無理しない?」
「ジャンルが違えば、気持ちも切り替わるし、大丈夫だろ」
「……頭のいい人の考えることは理解出来ないよ」
「フフッ、まぁ、あとから増やしたり減らしたりも出来るらしいから、様子見で専攻を決めるつもり」

ひまりには伝えておきたかった。

「じゃあ、アメリカには行かないってこと?」
「ん」
「ありがとっ!!」

ひまりは余程嬉しかったのか、国道に面してる路上で大胆にも首に抱きついて来た。

「ひまり、ここ路上だよ?」
「え?……あっ」
「別に俺は全然気にしないけどねぇ~」
「っ……は、離してっ」
「や~だね」

腰に回した手を緩めてやらない。
彼女の髪を優しく撫でていると。

「妹のラブシーンを見る羽目になるとはねぇ~~」
「ッ?!お兄ちゃんっ!!」
「路上でチューしてたってチクるぞ?」
「ちゅーはしてないじゃない!ぎゅーだけだよっ!」
「今にもしそうな勢いだったけどね~」
「……こんにちは」
「おぅ、妹の彼氏くん♪その後、体調は大丈夫か?」
「あ、はい、お陰様で」
「あんまりストレス溜めんなよ」
「……はい」

後ろからひまりのお兄さんが通り過ぎて行った。
それを俺らも追うように歩き出す。

「お兄ちゃん、今日は何で来たの?」
「来ちゃ悪いのかよっ」
「そういう意味じゃないけど」
「彼女が出張でいないから、メシ食いに来ただけ」
「そうなんだぁ」

< 255 / 299 >

この作品をシェア

pagetop