彼の素顔は甘くて危険すぎる
(ひまり視点)
『一緒に寝よ?』
遂に言ってしまった。
もう後戻りは出来ない。
不破くんはいつだって誠実で。
私のことを大事にしてくれている。
これまでも、何度もそれらしい雰囲気にはなったけど。
決してその先を求めて来なかった。
それはたぶん、私がそうさせるような雰囲気を醸し出していたからで。
優しい彼のことだから、それを察してくれたんだと思う。
口ではいつも『襲うぞ』とか『キス以外も』とか言うけれど。
いつだって無理強いはしない。
そりゃあ、際どい感じはあるんだけれど。
私の気持ちを最優先してくれているのはよくわかっているつもり。
だから、少しは成長して。
彼の求めることに近づきたいと思えるようになった。
大学に入れば、今よりも一緒にいれる時間が少なくなる。
課題の宿題も出ると聞いているから、きっと会う時間も極端に減るだろうし。
彼も環境が変わったら、心境が変化するかもしれない。
私より魅力的な人が周りに沢山いたら、きっと目移りするかもしれない。
そんなことを考えたら、後悔だけはしたくなくて。
**
仕方なさそうにベッドに入って来た彼。
困惑した表情で腕枕をしてくれる。
嫌だったのかな?
私が焦り過ぎたのかな?
もしかして、唐突な行動を目にして、幻滅したとか?
「不破くん」
「ん?」
「怒ってる?」
「怒ってない」
「嫌だった?」
「そんなこと無いけど」
「じゃあ、何で不服そうな顔してるの?」
「不服っていうか、戸惑い?」
「戸惑い?」
「ん、こんな風に抱き締めてたら、理性がぶっ飛びそうで」
「………フフッ」
「おかしいか?」
「ううん、全然」
いつもの彼だ。