彼の素顔は甘くて危険すぎる

(ひまり視点)

勇気を出して、ボタンを外してみたけど。
外す楽しみってのがあるらしい。
そういうものなんだね。

知らないことが沢山あって、勉強になる。

以前、胸を鷲掴みされたことがあるから、抵抗が無いというか。
好きな人だからなのかもしれないけど。
いつでも触れて欲しいと思えるようになっていた。

ボタンを付け直そうとすると、その手を掴まれシーツに張り付けられた。
覆い被さるように見下ろす彼。
さっきまでの優しい瞳ではなく、獰猛な黒豹の瞳になっていた。

「煽ったのはひまりだからな」
「っ……」

ジンと疼くような甘美な声音に、胸がトクンと跳ねた。

ゆっくりと塞がれる唇。
啄められて角度を変え、甘噛みされる。

何度もしてるはずなのに。
それでも、初めての時みたいにキスのドキドキ感が堪らない。

外したままのパジャマのボタン。
スース―とする胸元に、暖かい彼の手が。

前に服の上から鷲掴みされたのとは全然違う。
ちょっと触れるだけでも、心臓が暴れ狂って、今にも飛び出しそうなほど。

唇に意識を集中させたらいいのか。
胸元に意識を集中させたらいいのか、分からない。
余裕がなさ過ぎて、苦手な息継ぎが更に難しくて。

彼が言っていた、手順というのが、こういうことなんだと漸く理解出来た。
……私には、相当な時間をかけて手順を踏まないとダメだと。

キスの雨が止み、彼の体の重みを感じる。
彼にぎゅっと抱き締められていた。

「これ以上は無理。……歯止めが効かなくなる」

優しすぎる彼に嫌われないように、もっと自分磨きしなきゃ。

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