彼の素顔は甘くて危険すぎる

電車を降りた彼を距離を保って後をつける。
駅構内の階段を軽い足取りで上る彼を下から見上げた、その時。

「あっ……」

いきなり彼が駆け出した。
急いで駆け上がってみたが、彼の長い脚で数段抜かしで駆け上がった彼に追いつくはずもなく。
階段を上がり切った私の視界に彼はいなかった。

バレたかも。
きっとそうだ。
どうしよう。

とりあえず、駅の外に出てみてから考えるか。

ICカードで改札機をタッチして駅の外に出る。
やっぱり彼の姿は無い。

彼の家が近くにあるのかもしれないと思って、暫く駅周辺を歩いてみたけど、彼に遭遇することもなかった。

***

不破くんを絶対視感でロックオンして数日。
今日も朝から不破くんに声をかけてるけど、完全に無視されてる。
というより、完全に距離を取られてる気がする。

いわゆる、ストーカー扱いというやつだ。

怯えるまではしてなさそうだけど、完全に嫌な顔をしたり態度で示すようになった。
本当に『好き』になったわけじゃないんだけど……。

不本意だ。
完全に誤解されてる。
ん?合ってるのかな?
あーもうよく分かんないけど。

好きになったわけじゃないけど、同一人物なのか知りたいだけで。
自分の能力といっていい、この絶対視感が間違ってないと証明したいということと。

ほんの少しだけ、冴えない不破くんが何でイケメン王子なのかというか。
どうして学校では別人でいるのか、それが気になって仕方ない。

別に学校生活とプライベートを分けてるスタンスならそれでも構わない。
中にはいるもんね。
家では良い子ちゃんだけど、学校に来ると憂さ晴らしみたいに弾ける子。
だから、もしかしたら彼も……と思ってしまう。

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