彼の素顔は甘くて危険すぎる

母親におねだりして、クリスマスプレゼントの代わりにCDを買って貰う予定になってたけれど。
どうせ抽選5名様というのは当たらないと諦めていたから…。
手渡されたオレンジ色の手帳が、神々しく見える。

「ありがとっ、大事に使うね」

リフィル式になっているから、中身の紙を交換したらずっと使えるみたい。
触り心地からして、レザーっぽい。

パラパラっと捲った、その時。
視界に入った文字に視線が釘付けになった。

「えっ、……何これ。えぇ~っ、一つ一つ手で書いたの?!」
「フッ、バレた」

そこに書かれていたのは……。

お互いの誕生日はもちろんのこと。
9月1日には『2年前、初めて会った日』と書かれている。

それ以外にも『2年前、初めてキスした日』『1年前、初めてお泊りした日』というのもある。
これまでの記念日らしきものが書かれていた。

しかも、彼の字は凄く綺麗。
いつ見ても達筆で、海外暮らしが長かったはずなのに、何故こんなにも綺麗な字を書くんだろう?
譜面に書かれている文字も殴り書きだと言うけれど、どれを見ても綺麗な字が記されている。

ついつい見惚れていると、捲った先の文字に視線が留まった。

3月1日のマスに『卒業式』と書かれている。
あっという間に卒業式になるんだなぁと、少し寂しさを感じた、その時。
同じマスに『1492日前』と書かれているのに気が付いた。

卒業式は分かるんだけど、1492日前って、何?

「ふっ……、聖くん、これなーに?」

そのマスに指差して彼に尋ねると。

< 297 / 299 >

この作品をシェア

pagetop