彼の素顔は甘くて危険すぎる

日曜日の午後1時。
上野駅で待ち合わせている親友の麻友ちゃんと合流する。

「ひまちゃん、ひさしぶり~」
「麻友ちゃん、髪切ったの?」
「うん、イメチェンしたくて」
「長い髪も似合ってたけど、短いのも可愛くてよく似合ってる」
「ホント?……ありがとっ」

小学校3年の時に絵画コンクールでお互いに入賞し、それ以来絵画教室やこども個展でよく見かけるようになって。
いつしか仲良くなって、連絡を取り合う仲になり、今ではこうして美術展を見たり、プロの絵師さんのイベントに一緒に行く仲になった。
『絵』を通して分かり合える友達で、美大を目指す唯一の友人仲間だ。

私が、私立の中高一貫校に通ってることもあり、普段は中々会えないけど、こうして休日にはよく会う。

今日は久しぶりに上野駅周辺の美術館巡りをすることになっている。
美大入試を来年に控え、少しずつ現代アートだけでなく、色々な技法を取り入れた名画に触れておかないとならなくて。
麻友ちゃんと一緒に美術館巡りをして入試対策をすることになった。

「麻友ちゃん、専攻決めた?」
「まだ……」
「私も」

美大と言っても色々ある。
油絵、水彩画、彫刻……基本、授業で触れるけれど、やっぱり将来につながるものを勉強したい。

「麻友ちゃんは水彩得意だよね」
「うん。でも、最近ソフトで描いてみてるけど、やっぱり実物とは違うんだよね」
「分かる~!鉛筆で描く感覚とパソコンで描く感覚は別物だよね」
「そうなんだよね……」

麻友ちゃんも私もデジタル画は苦手で、どちらかと言えばアナログ専門。
少しずつスキルを身につけないとダメそうだ。

< 30 / 299 >

この作品をシェア

pagetop