彼の素顔は甘くて危険すぎる

(不破視点)

最近、隣の席のヘルパーさんの様子がおかしい。
朝、下駄箱前で待ち伏せしたり。
一日中ガン見するし。
最悪なのが、毎日のように学校から尾行されてる。

『不破くんのこと、もっと知りたいなぁと思って』
少し前に彼女から言われた言葉。

そのままに捉えたら好かれてると勘違いしそうだが、彼女は絶対違う。

『べっ、別に、好きになったとかじゃなくて、ただ気になるというか……不破くんじゃなくて、何ていうか……』
本人も正直に言ったしな。
好きという感情ではなくて、単に気になる存在という位置づけなのかもしれない。

それが、『like』や『love』的な要素を含む『気になる』ではなく。
『interest』なんだと俺の直感がそういってる。


人は誰かに好意を寄せると、瞳や態度で大抵分かる。
仕草や溜息、視線の向け方、話す時の表情なども含めて、好かれたと感じる時のあの感じは彼女から感じない。

どちらかというと、初めてパンダを見る時や新商品のお菓子を手にした時の感覚と似ている。
彼女が言う『気になる』というのはまさにそれで、興味が湧いたという部類のはず。


けれど、何故、俺に興味が湧いたのだろうか?

いつも存在感を消してるのに。
わざわざ俺を注目することもないだろうに。

ふと振り返って何となく気付いたのが、階段で彼女に手を貸した後からだということ。
前にもナンパ男から助けるのに手を貸したのも似た境遇だったし。

だとすると、俺があの時の、彼女の言葉でいうと『王子様』だと気付いたということか。
だから、獲物を狙うみたいな眼で見られてたのか。

< 31 / 299 >

この作品をシェア

pagetop