彼の素顔は甘くて危険すぎる
(ひまり視点)
麻友ちゃんと美術館巡りを終え、カフェで一息ついた私たちは、暗くなる前に帰ろうと駅に向かっていた。
「来年の二科展、出そうかと思ってるんだ」
「あ、私もっ!」
「やっぱり?」
「入試前だし、自己評価だけでなく、他者評価も欲しいもんね」
「そうそう。他にも展覧会とか美術展とかにも出そうかと思って作品貯めてる」
「あぁ~同じだぁ~!やっぱり考えることは一緒なんだね~」
麻友ちゃんとは本当に気が合う。
いつも応募するのも悩む私は、一人じゃ何となく心細くて、麻友ちゃんと足並みを揃えて来た。
だからなのかな。
考えてることが大体分かるんだよね。
私も麻友ちゃんも『絵画』の部類だけど、最近『デザイン』にも興味が湧いてきた。
だから、将来の幅を広げるためにも挑戦はアリだと思って……。
「ひまちゃんって、彼氏いるの?」
「え?いないいない!いたら日曜日はデートしてるでしょ」
「だよね?」
「うん」
「でも、最近可愛くなったなぁと思って」
「そういう麻友ちゃんなんて、髪まで切ってイメチェンしたんだから、好きな人でも出来たの?」
「その反対」
「ん?」
「フラれたの」
「えっ」
「もう二か月くらい前だから、完全に吹っ切れてるけどね」
「……そうなんだぁ」
麻友ちゃんはアイドルみたいに可愛らしい感じの女の子で。
長い髪をアイロンでクルクルに巻いたり、流行りのメイクにも敏感で。
スタイルもいいから何着ても似合うし。
前に一緒に買い物してたら、芸能事務所にスカウトされてた。
それくらい可愛い麻友ちゃんなのに、そんな彼女を振る男がいるんだ。
私なら絶対OKするのに。