彼の素顔は甘くて危険すぎる
高級マンションの上階にある彼の自宅。
ご両親がどんなお仕事されてるのかしらないけど、きっと稼ぎがいいのだろう。
玄関に飾られた絵画や置物もかなりハイセンスな感じがするし、リビングソファーは質感のいい本革レザーだ。
壁に掛けられたテレビはかなりの大型で、ダイニングテーブルの上にある照明もお洒落なもの。
「お粥食べる?」
「……ん」
「キッチン借りるね」
突然の私の訪問で、彼は戸惑っている感じだ。
お粥を温め器に盛り、かぼちゃの煮物を小鉢によそる。
コップにお水を入れ、カラトリーと共にそれらをダイニングに並べた。
「お口に合うといいんだけど……」
「橘が作ったの?」
「……ん」
「いただきます」
彼が口につけたのを見届け、鞄からお便りとコピーしたノートを取り出す。
「これがお便りで、こっちのは今日の分のノート」
「……ありがと」
「体調どう?まだ痛みがあるの?」
「……もう平気」
「それは良かった」
彼の口に合うみたい。
スプーンが進んでる。
「昨日は助かった。……ありがとな」
「どういたしまして」
自宅から持参した容器をキッチンで洗いながら、カウンター越しに彼を見ると、黙々と食べている。
顔色も良さそうだし、だいぶ良くなったっぽい。
洗い終えた容器をトートバッグに入れ、鞄を取りにダイニングテーブルへと移動した、その時。
リビング脇のドアの奥にあるものに視線が留まった。
そこにはギターとドラム、ベースやキーボードといった楽器類が置かれていた。