彼の素顔は甘くて危険すぎる

9月下旬。
相変わらず、不破くんは無口のままで。
クラスメイトともあまり馴染めてない様子。
だからと言って苛めに遭ってるとかではないから、とりあえず傍観してるけど、毎日隣りで授業受けてても会話するきっかけも無い。

半月ほど観察して分かったことは、彼はあまり丈夫ではなさそう。
彼をじーっと見てると、よく咳き込んでる。
風邪なのかな?と思ってたけど、もしかしたらアレルギーなのかもしれない。
それに、気怠そうに机に伏してることが多い。

進学校では無いから、それほど厳しい校則もなく。
どちらかと言えば、インターナショナルスクールのように開放的な校風だから、着崩していようが髪がボサボサだろうが大して指摘されたりしない。
不破くんはいつも無頓着ヘアーだけど、変に不潔そうな臭いがしたことは一度もない。
どちらかと言ったら、シトラス系の爽やかな匂いがする。
もしかしたら、癖毛なのかな?だなんて、勝手に妄想しちゃうけど。

「不破くん、体調が悪い時は教えてね?」
「………」

一瞬だけ視線を寄こした彼は、小さく頷いた。
もうすっかり彼とのコミュニケーションはこのやり取りが定着している。

***

9月の最終土曜日の21時過ぎ。

「えぇぇ~っ、ヤダよッ!もう21時過ぎてるし、明日にしたら?」
「今日、瑞月(みずき)(兄の彼女)の誕生日なんだよっ。今日中に渡さないとマジでブチ切れるから」
「知らないよ、そんなこと言われても」
「そこを何とか!!ひまりが欲しいって言ってたイラストのソフト買ってやるから」
「………どこなの、そこ」
「サンキュ~!今送るな!」

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