彼の素顔は甘くて危険すぎる
息遣いですら吸い込まれていく感じがする。
ひんやりとした彼の指先の感覚を感じながらも、浴びせられる視線が怖い。
辛うじてフリーになってる左手で彼の肩を押し返そうと力を込めてみるけど、全く動かない。
「俺が『SëI』なのかどうかを確認する為に来たんだろ?」
「不破くんが『SëI』なのかどうかは気になるけど、別に知らなくても構わない」
「じゃあ、何」
容赦なく威圧してくる。
声がワントーン低くなった。
「前々からずっと気になってて。声が掠れてるから風邪ひいてるのかな?とかアレルギーなのかな?って」
「……」
「持病で手術するために日本に来たのかな?とか」
「……」
「だから、『SëI』がどうとかじゃなくて、不破くんのことが気になっただけ」
「……へぇ」
「いつも無口だし、馴染めないというより壁作ってる感じだし。誰かと親しくなるのが嫌いなのかなって思って」
「……」
「なのに、私が困ってるといつでも助けてくれるから……」
「だから?」
「どんな人なのかな?って気になって……」
「へぇ」
とうとう白状してしまった。
絶対視感はやっぱり間違ってなかったみたいだし。
それ以外で気に留めることなんてないと思ってたけど。
よくよく考えたら、やっぱり気になる。
……不破くんという人がどういう人なのか。
「知りたきゃ、教えてやるよ……俺がどんな奴か」
「んっ……っ……」
完璧すぎる美顔が近づき、艶気のある薄い唇が目の前に現れたと思った、次の瞬間。
彼のその色気のある唇が私の唇に重なった。
生まれて初めてのキスは、想像していた以上に艶めかしい音を立てて。
容赦なく蠢く彼の舌先から抗うことも出来ずに……。