彼の素顔は甘くて危険すぎる
医学部5年の兄・奏汰から、彼女の誕生日プレゼントを届けて欲しいと連絡が来た。
今日は先輩の結婚式らしく、現在三次会に突入しているという。
本当は二次会で切り上げるつもりが中々抜け出せなくて、自宅にプレゼントを取りに帰る時間が無いという。
それで、その三次会の会場にプレゼントを届けるという任務を賜った。
……ソフトのために。
お風呂も済ませてすっかり寝る準備万端だった私は、Tシャツにショートパンツに着替え、兄の部屋の机の上に置かれたプレゼントを手にして自宅を後にした。
兄から送られて来た位置情報を頼りに指定されたBarへと向かう。
***
西麻布にあるBar『BLUE』に到着した私は、兄に荷物を手渡す。
「お兄ちゃん、約束破らないでよね?」
「分かってるって。後で欲しいソフトのやつ、LINEしといて」
「らじゃー」
「気を付けて帰れよ?変な奴に付き纏われたら連絡しろ?」
「うん」
「橘の妹っ、すげぇ可愛いじゃん。名前何て言うの~?」
「高校生だったよね?彼氏いんの~?」
「お兄さんたちと今度一緒に遊ばな~い?」
「こいつら無視していいから、もう帰れ」
「……うん」
「飲み過ぎなんだよっ」
「えぇ~っ、帰っちゃうの~?連絡先教えてよ~」
一応、兄らしい一面もある。
すっかり出来上がってる友人らを軽くあしらってる兄にアイコンタクトして来た道を戻る。
夏の暑さはどこへやら。
すっかり秋めいた風が肌を撫でる。