彼の素顔は甘くて危険すぎる

***

彼女が俺の自宅に通うようになって数日が経った頃。
クリスマスまで数日とカウントダウンしてる中。

俺の自宅に通う彼女の様子が、少しおかしいことに気付いた。
メール受信音みたいな短めな音がする度に、怯えてる感じがして。

1時間に8回もそれが鳴り、彼女がスマホの電源を落としたのを見てしまった。

そんな彼女が気になって、曲作りが捗らない。
世の中はクリスマスムードだけど、俺はバレンタイン向けのCMソングを作成しなくちゃならなくて。
甘く蕩けるような、それでいてときめく想いを曲に乗せないとならないのに。

それどころじゃない。
とてもそんな気分になれねぇ。
おいっ、ヘルパーよ!
俺の邪魔するなら部屋から追い出すぞ!
そんな風に一言いいたいが、彼女の表情からしてそれは言えない。
ホントに何かに怯えているから。

***

食事を終え、いつも通り食器を片付ける彼女の横に立ち、シンク台にもたれ掛かるようにして声を掛けた。

「スマホ、電源落としたみたいだけど、何かあったのか?」
「え?」
「毎日ここに通ってて、親に怒られたとか」
「あ、それは大丈夫。完全に彼氏の家に通ってると思ってるから」
「えっ……」
「うち、結構オープンな家だから、全然そういうの気にしてない」
「へぇ~」

いや、そういうこと聞きたいわけじゃないんだけど。
何かはぐらかされた気がする。

「で?……何かあったの?」

今聞かなかったら、きっと聞きそびれると思うから……。

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