彼の素顔は甘くて危険すぎる

(ひまり視点)

不破くんに気付かれてしまった。
無言で電源落としたのに。

不破くんの家に通って、彼をデッサンするようになって。
麻友ちゃんとデジタル画も頑張ろうと約束した事もあって、イラストの投稿サイトに登録し、そこで彼を描いた絵を公開した。

もちろん表情が分からないように、楽器を演奏する手元だったり、後ろ姿だったり。

投稿して僅か半日で、フォロー登録が付き、一日経ったら驚くほどのメッセージが来ていることに気付いた。
誰だか知らない、サイトを通しての人なのに。
何だか、丸見えになったみたいで急に恥ずかしくなって。

そんなある日、その登録してくれたうちの一人から来たメッセージが意外なもので驚いた。

『二年前の○○美術展の特別賞の方ですよね?』って。
サイトに登録したユーザーネームは、本名とは全くの別物なのに。
『ずっと前からファンなんです』という言葉に踊らされて。

フィッシング詐欺みたいだと分かってるのに、ついつい自分のことを認めて貰えたと勘違いして。
昔からの知り合いみたいな感覚に陥っていた私は、友達と話すみたいにメッセージをやり取りしてしまった。

『絵画』という共通のもので知り合えたから、悪い人ではないと先入観が働いて。

不破くんがスタジオでレコーディングする日。
時間があることもあって、そのメッセージをくれた相手と待ち合わせして会った。

地域限定の美術展ということもあって、居住地域が程近く。
会おうと思えば、いつでも会える距離だということも拍車をかけたんだと思う。

ファミレスで待ち合わせして、その人のお宅に遊びに行った。

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