彼の素顔は甘くて危険すぎる
(ひまり視点)
不破くんに事の一部始終を話したら、呆れられた。
分かってる、自分でも馬鹿だって。
本当に良い人だと、優しい人だと思い込んでたから。
共通の趣味みたいなものでカモフラージュされて、本質的な所が完全に見えなかった。
「彼氏になってやるよ」
「え?」
今、何て?
彼氏って言わなかった?
「あ、言っとくけど、フリだかんな」
「………ん」
「学校から自宅に一旦帰らなくてもいいなら、ここに直にくればいいし。そしたら、俺と一緒に帰れるでしょ」
「あ、……うん」
「絵に使う道具なら、うちに置いておけばいいし。買い物に出るなら付き合うし」
「……ん」
「いつも美味しいメシ作って貰ってるお礼だかんな」
「……ありがと」
やっぱり、不破くんは優しい。
時々獰猛な黒豹みたいになるけど、それ以外はいつだって何気に気遣ってくれる。
アメリカ育ちだから、レディーファーストなんだと思うけど。
それにしても、この甘いマスクでされたら、勘違いしちゃいそう。
何も言わなくても気付いてくれるってことは、私が彼を見ているように、彼も私を見てるのかな?
だなんて、妄想が暴走しちゃうんだけど。
それでも、やっぱり……。
彼は気遣い上手のイケメン王子だって知ってるから。
いつだって、ここぞの時は助けてくれる。
それも、カッコよく。
この感じてる感覚を絵に表現出来たら、いい作品が描けそうなのに。