彼の素顔は甘くて危険すぎる
買って来た飲み物をベッドサイドのテーブルの上に置き、メモを張り付ける。
『早くよくなれよ』
彼女の寝顔を写メしようとポケットに手を入れた、その時。
「あ、忘れるところだった」
帰省したお土産をポケットから取り出す。
ラッピングされてる包装を解いて、彼女の髪にそっと留めた。
ハリウッド女優のアクセサリーを作っている作家のモノ。
親がハリウッド俳優専属のエージェント会社を経営していて、その伝手の情報から入手したショップで買って来た。
お団子ヘアーにも合うように、淡い桜色とパールとラインストーンであしらわれた花のヘアピン。
1点ものだから、『彼女』にプレゼントするのに相応しいと思って。
「似合ってる」
自身のスマホで何枚も盗み撮り。
後で見つかったら怒られるかも。
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「不破くんっ、……不破くん」
「んっ……」
レースカーテンから漏れる日差しが心地よくて、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
目が覚めたひまりに起こされた。
「何でいるの?」
「何でって、お見舞いに決まってんじゃん」
「……ありがと」
「まだ顔色が悪いから寝てろ」
「もう大丈夫だって。点滴ももうじき終わるし。そろそろお母さんか看護師さんが抜きに来てくれると思う」
「……ん」
「いつからいるの?」
「1時過ぎ頃かな」
「結構前だね」
「痛いとことか、辛いとことかは?」
「体が怠い感じだけど、点滴したから今は結構楽になった」
「そっか」
熱をもう一度確かめようと彼女の額に手を翳す。
「熱は無さそうだな」
「……うん」
自然と視線が交わった、その時。
コンコンとドアを叩く音がして、ドアがカチャッと開いた。
「あら、ラブラブな所悪いわね~」
「っ……お母さんっ、変なこと言わないで!」