彼の素顔は甘くて危険すぎる
白衣姿のひまりの母親が手早く処置を施しながら、ニヤッとした笑みを俺に向けて来た。
「可愛いピンね♪」
「えっ?……あ、何これ」
「……お土産、ロスの」
「あら、良かったわねぇ」
「……ありがと」
「どう致しまして」
ひまりは照れくさそうにピンに触れる。
「お粥作ってあるから、あとで下りて食べなさい」
「うん」
「彼氏くん、ひまりのこと、よろしくね♪」
「あ、……はい」
何故か、ウインクされてしまった。
古風な娘と違い、ひまりの母親はかなり明るい人らしい。
時計を確認すると15時半。
そろそろ帰らないと迷惑になるよな。
「もう少ししたら、俺帰るから」
「え、……うん」
「何?……もう少しいて欲しいの?」
「べっ、……別にそういう意味じゃ」
「素直じゃねぇなぁ」
「違うってばっ」
久しぶりに会話した彼女は、少し疲労感が滲む顔つきで。
見ているこっちが苦しくなる。
もっとしっかり休んで、十分に休息を取って貰いたいから。
ベッドに椅坐位状態の彼女は、部屋着姿が気になるのか。
不自然に胸元のボタン付近を触ってる。
何着てても気にしないのに。
「ひまり」
「……ん?」
「ぎゅーさせて」
「えっ……」
彼女のすぐ横に腰かけた俺は、両手を広げて彼女を誘う。
だって、10日ほど離れてたし、彼女のぬくもりが恋しい。
「ん」
「……」
動揺してる。
それも、ほんの少し頬を赤く染めて。
「早く来ないと押し倒すよ?」
「えっ?!……ちょっ、……えぇっ」
クリスマス・イヴの効果はまだ効いてるらしい。
無視することだって出来るのに完全に俺の言葉に踊らされてる。
「襲われたいの?」
「っ……ん~ッ……もうっ」
素直すぎる、ホント。
俺の胸に自ら飛び込んで来た。
ふんわりと柔らかい髪を揺らして……。