彼の素顔は甘くて危険すぎる

(ひまり視点)

始業式の日。
前日まで発熱していたこともあり、様子を見るため学校を欠席した。
3日間も高熱で魘されたせいですっかり体力が落ち、お腹は空いてても急には食べれず。
朝食にバナナを半分とヨーグルトを何口か食べただけ。

そんな私を見た母親が、午前中の診察が落ち着きを見せ始めた頃に点滴処置をしに来てくれた。

両親共に小児科医ということもあって、小さい頃から健康には気を遣っている。
両親が感染したら病院が回らなくなるから。

けれど、さすがに年末年始の忙しさには体が悲鳴を上げた。
普段から徹底的に感染対策している両親やスタッフと違い、運動もしない私が病気の子供の傍で読み聞かせを1日中しているのだから、免疫力が低下すれば感染するのは当たり前で。
毎年のように、年が明けるとダウンする。

薬の効きもあってぐっすり眠れた私は、すっきりと目覚めると。
驚いたことに、私の手を握って寝ている不破くんがいた。

夢なのか現実なのか、最初は分からなかった状態も、久しぶりに見た彼に触れると肌の体温を感じた。
夢ではないらしい。

制服姿なのに、眼鏡もかけて無ければ、ハーフアップみたいに片方をピン留めしている。
初めて見た時のイケメン王子様仕様の彼だ。

無意識にそっと髪に触れ、久々のドキドキ感を味わう。

最初の頃は髪を触るのも避けられていたのに。
いつからか、髪だろうが手だろうが、触らせてくれるようになった。
偽の恋人になった頃からだったかな?

何だかそれが特別なことに感じられて、つい触りたくなってしまう。
このイケメンすぎる王子様に。

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