彼の素顔は甘くて危険すぎる
「料理はスイーツみたいのも作れんの?」
「スイーツ?……ケーキとかクッキーとか?」
「あ、そうそう、そんな感じ」
「本格的なのは無理だけど、よくあるようなものなら作れると思う」
「なら、これくらいのま~るいチョコのやつがいい。名前分かんないけど……」
「これくらいの丸いやつ?」
彼は親指と人差し指で輪を作り、それを見せた。
「トリュフ?」
「あーそうそう、そんな名前のやつって、きのこのトリュフに似てるからトリュフなのか……?」
「うん、そう。チョコレートトリュフが食べたいの?どこにでも売ってるよ?」
「売りもんじゃなくて、手作りがいいの!バレンタインは♪」
「バレンタイン?……まだ1カ月以上も先だよ?」
「ん、今から予約しとく」
「……それは、構わないけど」
バレンタインのチョコをおねだりされた。
トリュフだなんて、オーソドックスだけどいいのかな?
「チョコなんて、ファンの子からいっぱい貰えるんじゃないの?」
「貰えないというより、貰わない?……受け取らないってことを公式サイトに書いてあるよ」
「……そうなんだ」
彼の話では、新曲が出る度に色んなプレゼントが届いて対応に困り果てた結果。
プレゼント類は一切受け取らないというスタンスを取ることにしたらしい。
「スタッフからは多少貰うかもだけど、義理チョコだし」
「……ん」
「やっぱりさ、特別な日は好きな子から貰いたいじゃん?」
「………え?」
「俺、その日、誕生日だから」
「………えぇっ!?2月14日が誕生日なの?」
「うん」
にっこりとした笑みを溢す彼は、私の頭をポンポンと。
まるで、『よろしくな』とでも言いたげな表情で。