はやく俺のこと好きになってよ、先輩。
「そんな・・・・・・。ほんとに一ノ瀬くんだったの?その、美咲ちゃんっていう子も間違いないの?」
「うん。間違いないよ。りっくんも見てたし」
金曜日の昼休みにトイレで聞いた話と、今日の出来事を全部仁乃に話した。
仁乃は時々驚きながらも、ちゃんと最後まで話を聞いてくれた。
「確かに元は遊び人のイメージはあったけど、明華と関わり出してからの一ノ瀬くんはそんな風には見えなかったけどな・・・。もし、それが本当なら許せない。でも明華、一ノ瀬くんに直接確かめなくていいの?」
「・・・そんな勇気ないよ・・・・・・全部嘘だったって、面と向かって言われたら?・・・・・・想像するだけで、無理。・・・怖いよ・・・」
「そうかもしれないけど・・・、明華の気持ちは?どうするの?」
「どうするもなにも・・・終わりでしょ・・・・・・のめり込む前でよかったよ・・・」
「明華・・・」
仁乃は眉を下げて何か言いたげだったけど、それ以上なにか言うことはなく、優しく背中を摩ってくれた。
「・・・よし!今日はバッチリお泊まりセット持ってきたから、泊まらせてもらうからね!さっき下で明華ママにも言ったからっ。今日はとことん語って楽しも!朝比奈先輩の方も、もっと詳しく聞きたいし〜っ」
いきなりスイッチが切り替わったかのように、いつものテンションに戻る仁乃。
今はこっちの方がありがたいかもしれない。
ズタズタになっていた心が、仁乃の明るさと優しさで修復されていくようだった。