はやく俺のこと好きになってよ、先輩。
ベッドの下に敷いた布団で仁乃は気持ちよさそうに寝息をたてて寝ている。
夜は仁乃の好きなK-popアイドルのLIVE映像を観たり、人気の韓ドラを観たりして、ふたりでワーキャー言いながらだいぶはしゃいだ。
疲れているはずなのに、私はベッドの上でまだ寝付けないでいた。
今日はりっくんからまさかの告白をされたというのに、どうしても考えてしまうのは、一ノ瀬くんのことだった。
これまでの一ノ瀬くんとのやり取りが頭の中に何度も映し出される。
意地悪な顔、笑った顔、不安そうな顔、真剣な顔。
ほんとすごいよ、一ノ瀬くん。
あれが全部演技だったなんて、俳優にでもなれるよ。
どの表情も言葉も嘘だとは思いたくないんだけどな・・・。本当は違うって信じたい。
でも、信じて気持ちを伝えて、全部嘘だった時が・・・やっぱり怖い。自分がどうなるのかも想像できない。
臆病過ぎて自分でも引いてしまう。
私から関係を終わらせてしまえば、一ノ瀬くんはゲームに負けたことになるのかな。
それなら、私が気持ちを伝えて、一ノ瀬くんを勝たせてあげた方がいい?
そんなことを考えるなんて、だいぶ私もどうかしていると思う。
でも、やっぱり私にだってプライドがある。
笑い物にされるのはごめんだ。
休みが明けたら、私から全部終わらせよう。
そう決めても、心は反発しているのか、胸がギューッと苦しくなって涙が込み上げてくる
。
っ・・・
泣き声で仁乃を起こしてしまわないように必死で堪えながら、熱く重たくなった瞼をぎゅっと閉じた。