はやく俺のこと好きになってよ、先輩。


「最悪なのはこっちね。人の心弄(もてあそ)ぶとか、ほんと最低だから」


今の私にこんなことを言える勇気はなく、まるで代弁するかのように冷たく言い放ったのは仁乃だった。


「・・・・・・にの。時間ないから、行こ」


これ以上この場に居られないと思い、今度は私が仁乃の手を引いて男女6人の集団の横を通り過ぎた。


「な、なにあれ〜意味わかんなーい」


後ろから聞こえたそれは彼の腕にしがみついてるであろう彼女が発したものだ。


スタスタと売店に向かう私の横で、静かに仁乃は怒っていた。


「一ノ瀬くんにくっついてたあの子が、例の美咲ちゃん?でしょ。なにあれ、先輩睨みつけるとか、何様なの」


仁乃は怒ると怖い。たぶんこれは相当キレている。


「・・・・・・一ノ瀬くんのことがそれだけ好きなんじゃない?いいよ、気にしてないから」


「いや、気にするよ!明華のことあんなに睨みつけて、何なの?べったりくっついちゃって、あー吐き気する。あんな性格悪そうなののどこがいいわけ?一ノ瀬くん趣味悪すぎ。見損なった」


普段の可愛らしい仁乃からは想像できない言葉がポンポン出てくる。もはや一ノ瀬くんの悪口になってるよ。

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