はやく俺のこと好きになってよ、先輩。
「何?教室で明華待たせてるから手短にね」
次の日の昼休み、売店に行く途中、俺は運良く一人で歩いていた仁乃先輩を見かけて、今しかないと思って声をかけた。
やっぱり勘違いじゃなく、仁乃さんの態度は明らかに冷たい。前までそんなんじゃなかったのに。でもそんなの気にしてられなかった。
「あの、昨日言ってた弄んだって何すか?俺ですか?」
「他に誰がいるの?明華のこと弄んだんでしょ?一ノ瀬くんの女の子事情なんて、一ノ瀬くんの自由だけどさ、明華を巻き込んだことだけは許せないから。一ノ瀬くんが遊んでそうなタイプと明華は違うし、明華のことは本気なんだって思ってたのに」
仁乃さんは腕を組み、俺を睨んでいる。
明華先輩と一緒にいる時のキャピキャピした仁乃先輩とは別人みたいだ。
でもそれより、
「どういうことですか?俺は、明華先輩のこと本気でしたよ。遊んでたつもりは一切ないです」
これはマジで。
てか、なんでそんなことになってんだ?
明華先輩にはちゃんと本気だって伝わってたはず・・・
「それ、本当なの?ほんとに明華のこと、遊びじゃないの?」
「はい」
俺の毅然(きぜん)とした態度に、仁乃さんの瞳が微かに揺れた。