はやく俺のこと好きになってよ、先輩。


真っ直ぐ私の目を見て話す彼は、全く嘘をついているようには見えない。


待って・・・


じゃあ、全部私の勘違い?


私が勝手に誤解してただけなの・・・?


だったら、私・・・・・・
一ノ瀬くんにすごい嫌な態度を・・・


・・・最低だ。勝手に誤解して、「嫌い」なんて好きな人に言われたら一番傷つくことを言って。


「先輩・・・、」


「ごめん。ごめんっ。私・・・勝手に誤解して、一ノ瀬くんに酷いこと言った・・・」


だめだ、一ノ瀬くんの顔が見れない。


「謝んないでよ。確かにショックだったけど、先輩は悪くないよ。信じてもらえないようなことしてきた俺が悪い。だから、自分のこと責めないで」


そうは言われても・・・


勝手に勘違いして、勝手に傷ついて、一ノ瀬くんを傷つけた。


悲劇のヒロインぶったみたいで恥ずかしい。そんな自分に嫌気がさす。


「・・・ねぇ、先輩。俺のこと、嫌い?」


「っ・・・」


顔を上げると、一ノ瀬くんは少し首を傾げて私を見ていて、その瞳は心なしか揺れている気がした。


確かにあの時嫌いって言ったけど、そんなの本気で思ってるわけじゃない。


咄嗟についてしまった嘘だ。


でも、今この状況で好きだと言えるわけもない。


一ノ瀬くんのことが誤解だったとしても、恋愛することでまた振り回されるんだったら、もうしばらくは恋愛しない、受験勉強に集中するって決めたじゃない。

< 152 / 183 >

この作品をシェア

pagetop