はやく俺のこと好きになってよ、先輩。
体育祭は波乱の幕開け
『えー、本日は、天候にも恵まれーーー』
校長の挨拶が終わると、爆竹の音が雲ひとつない空まで響き渡り、高校最後の体育祭が幕を開けた。
「一ノ瀬くんと写真でも撮りに行く?」
プログラムが順調に進む中、私の横で体育座りをした仁乃がニコニコしながら聞いてきた。
「いや、いい」
「えーなんで。せっかくいい感じなのに〜」
そう言って仁乃は唇を尖らせていた。
屋上で話をしたあれから、一ノ瀬くんとは連絡先を交換したり、何度か一緒に帰ったりもした。
好きなのかと聞かれれば、まだ素直に頷くことはできない。
でも、最初に感じていた嫌悪感もないし、普通に話せているし、寧ろ居心地は良くなっている。
一ノ瀬くんも、程よい距離感を保ってくれている気がする。
無理に手を繋いだりもしないし・・・。
・・・あれ、・・・・・・え?
私、寂しいと思ってない?
いやいやいや、どんな我儘だよ。
「明華ー?大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
仁乃の声にハッとして戻ってきた。