③私、突然お嬢様になりました
うんうんと、頷きながら淡々と語る母親。
さらに、話は続く。
『学園では定期的にテストっていう名目でお茶会やパーティーが開かれるんだけど…。まぁ、簡単に言うとそれぞれのペアがどのくらい素晴らしいかを学園長、職員、そしてゲストが審査するわけね。そこでの評価に応じてペアのランク付けがされるんだけど、最初は初級からはじまって最高ランクは5級。と言っても5級のペアなんて、学年に1人いればいいくらい…ま、私と芳樹は5級ペアまでのぼりつめたんだけどね〜』
最後はそんな自慢で母親の説明は幕を閉じた。
やっぱり早まったよ…完全に。
ただでさえ、知らない男子とペアにならないといけないのに部屋まで同じって…。
リムジンが学園の建物の前で停車したのと、私が盛大なため息をついたのはほぼ同時だった。
「西園寺様、校内に到着でございます。それでは、私が引き続き学園長室にまずはご案内いたしますので…」
リムジンを運転してくれた中年の執事さんが車からエスコートして私を下ろすと、恭しくお辞儀をしながら言葉を紡ぐ。
「あ、よろしくお願いします」
そう言って、ペコリと頭を下げた瞬間、中年の執事さんはギョッとしたような表情で私を見つめた。
え…?私、なんか変なことした…?
にこやかな笑みを浮かべつつ、私が内心戸惑っていると。
「椎名、ご苦労さま。あとは僕に任せて」
突然、背後からそんな声がかかり、私は声のする方向に向かってクルリと振り返る。
「こ、これは…沢城様。承知いたしました…それでは、西園寺様私はこれにて」