③私、突然お嬢様になりました

な、なに?この空気…。

教室内にいるほとんど全員の視線が私に注がれていることに気づき、些か居心地が悪い。

すると。

「おはようございます。本日より西園寺グループのご令嬢、西園寺琴乃様が1年A組に転入されました…お嬢様学科、執事学科の皆様、どうぞよろしくお願いいたします」

私の前にサッと出てきた侑也くんは、爽やかに微笑むと深々クラスのメンバーにお辞儀をした。

まさか彼に助け舟を出されるとは思わなかったがそこは優秀な執事見習いといったところか。

「西園寺琴乃と申します。皆様、よろしくお願いいたしますね」

ノートに書かれていた言葉遣い、挨拶に気をつけながら私はニコリと微笑んだ。

第一印象がまずは物を言う。それは、庶民だろうがお金持ちだろうが変わらないはず。

オドオドした印象で舐められてもらっちゃ困るわ。

その時だった。

「まぁ…!今日から転入でしたのね。お噂はかねがね聞いております…失礼。見たことがない方だったので少々クラスの皆様も緊張されたご様子で」

優雅な笑顔を携えて私に歩み寄ってきたのは、これぞお嬢様と言った見た目の彼女。

長い栗色の髪は綺麗に巻かれ、頭には大きめの黒のカチューシャをつけている。

見た目は、少し派手だが顔立ちも整っていて立ち振舞も優美だ。

えっと…確かこの子は…。

侑也のノートには、同じクラスのメンバーが写真つきで記載されていた。

「…はじめまして。菖蒲池純連様…ですね?西園寺琴乃と申します。よろしくお願いいたします」

ピクリ。

「あら。私のことご存知なのですね…」


一瞬、私が名前を告げた時、菖蒲池さんの顔が真剣な表情に変わる。


「えぇ、もちろんです。クラスメートですもの。それに菖蒲池財閥のこと知らないなんてことありえませんわ」


うふふと、お嬢様の笑みを浮かべ対応する私は内心、冷や汗をかいていた。
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