③私、突然お嬢様になりました
「へぇ…?沢城が庇うんだ、意外だな〜。俺の予想では、西園寺家当主に無理矢理ペアにさせられたのかと思ってたけど…仲良いんだ?」
目を見開く本郷くんは侑也くんから視線を移し、私を見つめる。
いえ、本郷くん。正解です…!
そんなツッコミを心の中で入れた私。
すると。
「仲良いとかそういう話じゃないだろ。琴乃様はれっきとした西園寺グループのご令嬢なんだ。沢城家の一員として西園寺グループにお仕えするのが僕の仕事だからね」
と、本郷くんに言い返す侑也くん。
「ふーん。さすが沢城。執事学科の総合1位様は言うことが違うね〜」
「…まぁ、僕が1位なのは当然だけど。千影も僕に次いで毎回2位だし、頑張ってるほうじゃない?」
「…は?」
二人の視線が絡んだ瞬間、バチバチと火花が散っているように見えるのは…気の所為だと思いたい。
ちょっと、転入初日で争いごとは勘弁なんだけど!
二人のやり取りに内心ハラハラしていると。
「千影下がりなさい。ごめんなさいね、西園寺さん、沢城くん。私のペアが失礼ばかり…」
菖蒲池さんが本郷くんをたしなめ、間に入ってくれたおかげで何とかその場がおさまった。
「いえ。こちらもうちのペアが言い過ぎましたし…」
「まぁ…西園寺さんってすごくお心が広い方なのね。ぜひ仲良くしたいわ。西園寺さんはご存知みたいだけど改めて自己紹介させて?菖蒲池純連よ。そしてペアの本郷千影。よろしくね?わからないことがあれば何でも聞いてちょうだい」
サッと、私に向かって手を差し出し微笑む菖蒲池さん。
表情が全然変わらない…。まだ、本心がわからないから言動には気を付けないとね。
「えぇ…こちらこそ。よろしくお願いします」
そんなことを思いながら、私も彼女の手をギュッと、握り返したのだった。