③私、突然お嬢様になりました


「すばらしいわ。さすが、菖蒲池さん!」

「本当に惚れ惚れするくらい綺麗な所作…さすが1年生唯一の3級ね。私も早く2級に上がりたいわ」

菖蒲池さんを羨望の眼差しで見つめる他のクラスメートたちの胸元に光るのは私と同じ初級を表すブロンズバッジ。

「菖蒲池さん、よく勉強されてるわ。特に注意する点もなかったし…これからもこの調子でね!」

先生までべた褒めだし、やはり彼女はよほど優秀な生徒なのだろう。

「先生、お褒めの言葉光栄ですわ」

と、謙虚な姿勢も好感が持てた。

うん…やっぱり彼女とは円滑なお付き合いをさせてもらうほうがよさそうね。

私がそんなことを思案していた時。

「そうね…次は、西園寺さんにやってもらいましょうか。西園寺さん、前の方に出てきてくださいな」

ドキッ。

先生からの指名にクラスメートの視線が一気に私に集まった。

それは、まるでお手並み拝見とでも言うようなギラギラした視線ばかり。

「はい。よろしくお願いいたします」

表面上は冷静さを装いつつ、私はゆっくり立ち上がると、教室の前の方に進み出る。

大丈夫…琴乃、落ち着くのよ。
さっき侑也くんに習ったことを一つ一つこなせば問題ないわ。

「それじゃ、まずは基本所作から参りましょう。西園寺さん、こちらの席に座ってからスタートよ」

先生に促され、私はコクリと頷くと椅子にそっと腰かけた。

今回のお茶会は、英国式のアフタヌーンティーの設定。

私の目の前のテーブル上には、ティーポットにティーカップ、カップの下のソーサー。
そして、3段のスタンドに乗ったティーフーズが並べられている。

カップの中にはすでに1杯分の紅茶が注がれており、まずは飲み方からだ。

…確か紅茶を飲む時はソーサーは持ち上げず、カップのみ持ち上げて…ティースプーンは、イギリス式の場合使用後はカップの奥に置くんだったわね。

次に、ティーフーズに手を付ける場合はサンドイッチなどの軽食、スコーン、甘いスイーツの順番で食べる。

ナイフとフォークが添えられている場合はサンドイッチをお皿に置き、フォークで上から一番下のパンまで突き刺した後、サンドイッチを切り、ナイフでサンドイッチを支えながら口に運ぶ…。

頭の中で、反復しつつ、侑也くんから習った通りに所作をこなす私。

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