③私、突然お嬢様になりました
「よかったですね。琴乃様、菖蒲池さんみたいな素晴らしいご友人ができて、私も安心いたしました」
フッと、柔らかい笑顔でそう告げる侑也くんに私の笑顔がヒクッと引きつった。
よくもまぁ、ペラペラと心にも思ってないセリフが出てくること…。
「うふふ。西園寺さんとペアの沢城くんからもそう言って頂けて私も嬉しいですわ」
菖蒲池さんは完璧に騙されているがこの男。
『菖蒲池のご令嬢から友達になろうって声かけられたんだって?あんたも案外役に立つじゃん。ま、あれじゃ友達つーか、ストーカー予備軍みたいなもんだし、僕は勘弁だけど』
ケラケラと小馬鹿にしたように笑う彼に殺意を覚えたのはつい昨日の寮での出来事。
相変わらず、この悪魔は本当に猫をかぶるのが上手い。
いつか彼の素行を暴露したい気持ちにかられるが、後で倍、いや数倍にして返ってきそうで未だ実行には移せていない。
…ふん、今に見てなさいよ。
私みたいなぽっと出の庶民が嫌いなのはわかるけどこっちにだって我慢の限界っていうものがあるんだからね!
いつか人前で化けの皮を剥がしてやるわ。
と、そんな決意を固めた時だった。
「ご機嫌よう。貴女が…西園寺琴乃さん?」
後ろから突然名前を呼ばれ、私をはじめ、侑也くんや菖蒲池さん、本郷くんがほぼ同時に振り返る。