③私、突然お嬢様になりました
そこには、綺麗なサラサラの腰まである長い黒髪に雪のように白い肌。そして、形の綺麗な紅い唇を携えた神秘的な美しさのある女の人が立っていた。
さらに、胸元に光るバッジはプラチナ。
つまり4級ランクだ。
…うわ。すっごい美人…!
1年では見かけたことないし、先輩だよね…?
ニコリと優美な笑みをこぼす彼女に、私もつられて笑みを返す。
すると。
「…輝夜(かぐや)様」
隣にいた菖蒲池さんが目を見開いてポツリと呟いた。
輝夜様…?
聞き慣れない名前に私が首を傾げる。
周りの生徒達も萎縮してしまっているようでシンと静まり返っていた。
そんな中。
「鳳松院先輩。失礼ですが、琴乃様に何か御用でしょうか?」
バッと動いたのは侑也くん。
「…あら?沢城くんじゃない。ご機嫌よう。そう…西園寺さんのペアは貴方だったわね」
「えぇ。まぁ…ご当主直々の命でして…それよりも3年の鳳松院先輩がこんな所までわざわざお一人でどうされたんです?」
クスッと上品に微笑む彼女に物怖じせず、対等に会話している姿は頼もしく見えた。
しかし。
「うふふ。今日は会長のお使いなの、西園寺さんに用事でね」
「……」
鳳松院先輩がそう告げた途端、饒舌に話していた侑也くんが急に黙り込んでしまう。