③私、突然お嬢様になりました
ど、どうすれば…。
密着しているから、自分の心臓の音や緊張が相手にも伝わってしまいそうで思わず身体に力が入った。
次にどんな反応を示すのが正解か、頭をフル回転させていた時。
パッ。
「ほら、授業始まるから行くよ?」
…はい?
突如、私の身体を離した侑也くんは特に気にした様子もなく、後ろにあった屋上の扉に手をかける。
「…え。う、うん。そうだね…」
キョトンとする私をよそに、いつも通りの彼は、サッサと扉を開け屋上を降りていく。
「早くして」
と、侑也くんに促された私も彼に続いて屋上から出ると、共に1年A組の教室に向かって廊下を進んだ。
「次は、確か公民ですよ。予習ちゃんとしてきました…琴乃様?」
「うん、一応…」
すでに、執事モードで話しかけてくる彼に私もいつも通り対応する。
あれ…?どういうこと?さっきまでのって夢…、幻??
そっか。侑也くんにとってあのハグはお礼…!いや、感謝のしるし…?
もしかしたら、昔海外に住んでたとかでそういうの挨拶みたいな…?
侑也くんの行動に戸惑いつつも、その後は特に何事もなく平和な1日が過ぎた。
けど、この数日後…。
またもや厄介事が舞い降りてくるなんてこの時の私は予想していなかったんだ。