③私、突然お嬢様になりました
社交ダンスなんて櫻乃学園に入学する前は経験なんてないのだから不安になるのも当たり前。
「しょうがないな…残り数日、死ぬ気で練習すればそれなりに見れる踊りにはなるよ。後は相手は僕なんだからフォローするし…」
侑也くんの口からそんな優しい言葉が出てくるなんて思わなかったから思わず目を丸くする。
「言っとくけど、あんたに無様に踊られちゃ僕も困るから付き合ってあげるだけ。さ、とりあえず今のレベルも確認したいし部屋のドレス片付けてから練習するよ」
「う、うん…!」
テキパキとドレスを整理していく彼を手伝い練習スペースを確保する私。
…ふふ。なんだかんだ一緒に過ごしていくうちにちょっとは私のこと認めてくれてるのかな?
そう思うと少しだけ嬉しい気持ちになった。
しかし。
「おい、そこのステップ全然違うから!授業で何学んでんだよ」
「そこもう一回最初からやり直し。同じこと何回言わせれば気がすむわけ?」
その後始まった地獄のレッスンに私はどんどん笑顔が引きつっていく。
あ、悪魔め…!
予想以上の手厳しさに音を上げそうになるのをグッと堪えたものの、練習は夜遅くまで続いたのだった。