③私、突然お嬢様になりました
「…姫香」
ポツリと呟いた侑也くんの声は…きっと隣に立っていた私にしか聞こえていなかっただろう。
姫香…?姫香ってどこかで…。
なんだか聞き覚えのある名前に私は小さく首を傾げた。
すると。
「急に声をかけてしまってごめんなさいね。この前は輝夜に行かせたんだけど…私も貴女に会ってみたかったの。はじめまして、櫻乃学園生徒会長の蘭姫香です。よろしくね、西園寺さん。そして、こっちが私のペアで桐生一馬よ」
せ、生徒会長!?
ふふっと、可愛らしく笑みをこぼす彼女がまさか噂の生徒会長、蘭先輩だとは思わず私はサーッと血の気が引くのを感じた。
「し、失礼しました…。西園寺琴乃と申します」
必死に取り繕い、私は先輩に対して恭しくお辞儀をする。
「あらあら。そんなに畏まらないで…!ふふ。お噂通り可愛らしい方ね?侑也がペアにしたいと思った気持ちもわかるわ…」
え…?
一瞬、蘭先輩の笑顔が寂しそうに見えて私は戸惑った。
しかし。
「あなた達のダンス、楽しみにしてるわ。私と一馬はすでに5級所持しているから今回はゲスト側なの。あ!西園寺さん、生徒会加入の話はしっかり考えてね…!良い返事を待ってるから」
と、先程までの表情が嘘のように可憐な笑みを浮かべ、蘭先輩は桐生先輩と共に来賓席へと行ってしまう。