③私、突然お嬢様になりました

「あ!琴乃ちゃん、こっちです!キャー、ドレスすっごくお似合いですよ」

真紅のマーメイドドレスに綺麗な髪をアップにした純連ちゃんと彼女に合わせた色合いのタキシードを身に纏った本郷くんの姿が目に入る。

「まぁまぁじゃない?純連様には劣るけど…」

相変わらずな本郷くんに苦笑いを浮かべつつ、再度侑也くんに視線を移した。

「菖蒲池さん、とてもお綺麗ですよ」

…さっきよりは幾分かマシだけど、やっぱり様子がおかしいよね。

いつもの執事モードで純連ちゃんを褒めているが、若干笑顔に覇気がない。

「ありがとうございます。沢城くんもいつも通り素敵ですわ」

純連ちゃん達は気づいてないみたいだけど…。

私はチラチラと、侑也くんの体調を気にしつつ、周りに悟られないよう笑みを浮かべた。

すると。

「お集まりの皆様、櫻乃学園主催のダンスパーティーにお越し頂き、誠にありがとうございます。櫻乃学園学園長の穂南玄弥と申します。本日は、生徒たちの日頃の成果を見せる場にございます…来賓の方々もご子息、ご息女の成長をしっかりと見ていってください」

そんな学園長の言葉に会場からはわれんばかりの拍手が巻き起こる。
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