③私、突然お嬢様になりました
『おぉー!君が琴乃だな〜。会うのは初めてじゃな。わしは西園寺公久(きみひさ)。莉乃の父親で君からしたら祖父になる』
『えっと…はじめまして。西園寺…琴乃です』
ニコニコと優しい笑みを浮べる男性に私もとりあえず、愛想よく笑みを返す。
『顔は昔の莉乃にそっくりじゃな〜。でも、芳樹の血も入ってることだし賢そうだ。うんうん』
…あれ?確かおじいちゃんとは仲が悪くて絶縁状態だったんじゃ、ないの?
以前、父親が生きている頃に、母方の親戚とはほぼ絶縁関係だと聞いたことがあった。
なんでも、父と母はほぼ駆け落ち状態で家を飛び出したらしい。
だから、本当に嬉しそうに目を細める男性に私は戸惑いを隠せなかった。
そんな私の困惑した表情に気づいたのか、男性は、一瞬懐かしそうな表情を浮かべると。
『芳樹…君の父親だな。アイツはすこぶる優秀な男じゃったよ。ヤツが生きている間は君たち家族の情報は一切出てこなくてね。まぁ…莉乃と駆け落ちしたことは正直、今でも許せんが…こんなに若くして死ぬには些か惜しい男じゃよ』
そう呟いて、小さくため息をついた。