③私、突然お嬢様になりました
練習の成果が出ているようで、今の所目立ったミスもない。
それに少しだが周りを見る余裕まで出てきた自分にあの地獄の特訓は無駄じゃなかったと褒めたい気持ちまで出てきた。
「余裕そうじゃん、琴乃様」
「…ふふ。まぁね。侑也くんの特訓のおかげかな。それよりさっきと比べると顔色良くなったねよかった」
侑也くんの顔色を確認し、ホッと胸を撫で下ろす。
「あんたって本当に変わってるな…普通、自分のこと嫌いだって言ってるヤツのこと心配するか…?」
呆れたような声を上げる彼に私はキョトンとした表情を浮かべた。
「そうだね…。でも、色々嫌味は言われるけど侑也くん、執事としての仕事は完璧にこなしてくれてるし…それなら私もお嬢様としての仕事は完璧にしなきゃ…でしょ?」
「本当に…俺のペアはどうしようもないくらいのお人好しだな」
ドキン。
クスクスと微笑む侑也くんの笑い方がいつもの人を小馬鹿にしたような笑みじゃなくて胸が高鳴る。
いやいや、違うから!
今のはギャップにちょっと驚いただけで…。
てか、ダンス!ダンスに集中しないと…!
心に浮かんだその気持ちを振り払うようにその後の私はダンスに集中したのだった。