どんな君も、全部好きだから。
そんな私の反応を見た先輩は「・・・変わらないんだね」とポツリと呟いた。


「え?」

「昨日あんなこと言ったから早坂さんに嫌われたかなって。普通に話してくれるとは思わなかった」


そう言った先輩の笑顔はいつもの爽やかなものではなくなっていて。

昨日の緊張感を思い出した私の身体は少し強張った。


「・・・嫌いになんて、そんな・・・。先輩は私を心配してくださったんだと思ったので」

「そう。早坂さんて良い子だね。それとも良い子ぶってるの?ほんとにただ心配しただけだって思ってるならほんと尊敬するよ」


あからさまな皮肉に、私の心臓がドクンと鳴る。

普段こんなふうに悪意をまとった言葉をかけられることがないから、どう返していいかわからない。

私に攻撃的な言葉を言う先輩は笑みを浮かべているけど、その表情の奥には苛立ちが見て取れた。

先輩の忠告を聞かなかったことが、これほど先輩を豹変させることになってしまったの?


「君とあいつがどんな関係だろうが、どうでもいいけどね」


どうでもいいなら、なぜこんなに噛みついてくるの?

本当に関心がないなら、私に構わなければいいんじゃないの?

でも私に何か言ってしまうのを止められないほど、先輩の中で夏海くんに関することは『どうでもいい』という位置づけではないってことだよね?

いつも穏やかな先輩がこんな言葉を並べてしまうその理由は、いったい何なんだろう。
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