どんな君も、全部好きだから。
ニヤッと笑った先輩はいつもの爽やかな雰囲気は全然なかったけど、夏海くんのことを話すときのような重苦しい怖さもなかった。


「もうバレちゃったし、これからも早坂さんの前では素でいかせてもらおうかな」

「せ、先輩・・・?」

「俺が裏表ある男かどうかちゃんと見て判断してよ」


少し意地悪そうな笑顔で私を見る先輩に、私はどう反応したらいいかわからずタジタジしてしまう。


「早坂さん、大人しいし意見言ってるところもあまり見たことなかったから何でも素直に聞き入れるかなと思ったのに、全然そうじゃなくて面白いね」

「お、面白い、ですか?」


そんなことも初めて言われたな。

私の何が面白いのかわからないけど、さっきまで先輩を怒らせてしまったと思っていたので、嫌われてはいないみたいだとわかって少しほっとする。

やっぱり人から悪意を向けられるのは単純に怖いから。


「で、あいつのこと好きなの?」

「へっ?!」


急に思いもよらない質問をされて、動揺のあまり手に持っていた本を落としそうになった。


「す、好きかどうかは・・・・・・まだわからないです・・・」


恥ずかしさのあまり声のボリュームが極小になる。


「でもあいつの方は早坂さんのこと好きでしょ。俺に対する態度でバレバレなんだよね」


私と先輩が話しているときに夏海くんの雰囲気が怖くなったことがあったけど、そのことを指しているのかな。

先輩に嫉妬している、と言った夏海くんを思い出して思わず顔が赤くなってしまう。
< 103 / 246 >

この作品をシェア

pagetop