どんな君も、全部好きだから。
* *


結局、事務的なこと以外は何も話さないまま当番の時間が終わった。

帰り支度をして図書室の鍵を閉めていると、


「早坂」


と夏海くんに背後から声をかけられて、私は思わず身体を強張らせてしまう。

全身に響き渡るドクドクとした鼓動がうるさくて、私はなかなか呼びかけに反応できないでいた。

なんでこんなことになってしまったんだろう。

もっと普通にしたいのに。

夏海くんにいつまでこんな失礼な態度でいるつもりなの・・・?


何も答えない私に夏海くんはしばらく無言でいたけど、聞こえてきたのは


「一緒に帰ってもいい・・・?」


という小さな声だった。

その声があまりにも弱々しかったので、私の心臓がぎゅっと苦しくなる。

急いで振り向くと、不安げな表情をした夏海くんが私を見下ろしていた。

夏海くんにこんな顔をさせてしまった自分に腹が立ってうまく言葉が出てこない私は、代わりにコクリと頷いた。
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